平成17年2月分
掲載シナリオ
何度も映画化が企画され、そのたびにご破算になっていたという企画。
やっと宮部さんがOKを出した企画だけあって、力作に仕上がっています。
「競売物件を占拠する占有屋の実態」に関しては書き込みが足りないかもしれないが、「今日の家族のあり方」の書き込みに関しては素晴らしい出来栄え。
入れ替わり立ち代り大量に登場する、実力派キャストの演技合戦を楽しむのも一興かと。
滋賀の信楽で今も精力的に活動する陶芸家・神山清子(田中裕子)とその息子である賢一(窪塚俊介)の陶芸にかけた思いを熱く描いた実録ヒューマンドラマ。
田中裕子を主役に持ってきた時点で、この映画のかなりの部分は成功に導かれたといっても過言ではない。
名だたる芸術家の例に漏れず、非常にエキセントリックであり、また母親としての慈愛を併せ持つ難役をこなせるのは、この人か大竹しのぶぐらいしかいないでしょう。
2人の陶芸にかける熱意(前半)と、白血病に倒れ死んでいく賢一の闘病生活と、彼を必死に救おうとする仲間たちの運動(後半)が描かれるが、前半と後半がうまいことリンクしていないというか。
北川れい子は「後半の骨髄バンク運動が決して押し付けがましくない」と書いていて、確かに押し付けがましくありません。骨髄バンクの大切さも分かります。
しかし「享楽主義者め!」と言われようとも、私がこの映画で見たかったのは「骨髄バンクの崇高な意義」より「神山清子の破天荒な生き様」というのが本音です。