アリスI

アリスI

1972年9月5日発売。

ロックな楽曲も含まれていますが(「何も言わずに」、「木枯らしの街」のギターやハモンドオルガンの音色は時代(サイケやプログレ)を感じさせます)、基本はギターをメインにした簡素なフォークソングがメインです。

谷村新司堀内孝雄の歌い方も含めて、後年のアリスの持ち味であるダイナミックさやドラマチックさはあまり見られません。

好きな歌は「アリスの飛行船」、「羊飼いの詩」、「何も言わずに」です。

夢の樹

夢の樹

1985年10月19日発売。
愛らしい歌声とは裏腹に、作中には物凄く我が強く、プライドが高くて物分かりの悪い女性たちが登場します。

「一人息子」では「うそでいい。何よりもお前が必要だと言ったならば、何を捨ててもついていくはずだった」(本当に好きだったら何も言われなくてもついていけるはずなのに・・・)。

「ピエロ」では「優しそうな女ならば 私のこと愛せますか わかりきった答えだから 聞けはしない 私ピエロ」(プライドが高くて自分の方から愛していると言えないんだ・・・)。

「見返してやるんだわ」では「今でもあなただけ 本当にあなただけ まだ好きなのに 見返してやるんだわ あなたのこといつかは あなたより素敵な人 いないわけじゃないのよ」(完全なる強がり!)。

けっこう聴いていて胸が苦しくなってくるんですけど、岡村孝子の作品に関しては、曲中に登場する登場人物の感情や個性がビリビリ伝わってくる初期の作品の方が好みです(1988年に発売されたフォースアルバムの「SOLEIL」では曲中の登場人物像が洗練されてものわかりが良くなっています。悪く言えば言葉や歌がサラッとして心に引っかかりにくくなったような気がします)。

SOLEIL

SOLEIL

好きな歌は「一人息子」、「見返してやるんだわ」、「ピエロ」、「砕ける波に・・・」、「夢の樹」です。

1979年12月8日発売。

大ヒットシングルであり、ファーストシングルの「異邦人」を含むファーストアルバム。

日本では発想する人がいない「中東を舞台とした異国情緒」というテーマが根底に流れるコンセプトアルバムといえるかもしれません。ちょっと聖書の香りもします。

いつも思うことですが、有能な歌い手、作詞家、作曲家、アレンジャー、プロデューサーが同じ場所に同じタイミングで揃わないと傑作は出来ません。そもそも優秀な人材がきっちり揃うなんて奇跡みたいなものなので、傑作が出来上がる時は本当に一瞬のタイミングが完璧に揃った時なんだと思います。

ただし「異国情緒」感で統一されているのはいいのですが、同じような切り口の作品(ミドルテンポで「放浪」や「待ち人」がテーマ。いわば「異邦人」の亜流)が前半から中盤に並んでいて、アルバムの順番どおりに聴いていると正直言って飽きてくるので、私はシャッフル再生で聴いています。

好きな曲は「異邦人」、「ギター弾きを見ませんか」、「帰郷」、「ナルシス」です。

伝言

伝言

1990年4月21日発売。

「伝言」(キャッチコピーは「伝えたいこと、溢れてとまらない・・・」)というタイトルのとおり、硬派なロックアルバムですね。

後年の福山さんの持ち味である「甘く切ない歌声」、「親しみやすさ」、「ノリの良さ」からは遠く、一人の若者が抱えるいら立ちや怒り、思いのたけを思い切りガツンと叩きつけたような楽曲が並んでいます(影響を受けたと公言している尾崎豊の作品を思い浮かべていただくとイメージしやすい)。

はっきり言うと歌唱もまだまだ未完成であり、楽曲の出来不出来が激しいアルバムです。

それと時代が時代だけに、音作りや歌い回しがBOØWYやCOMPLEXの影響を受けているような気がします。

好きな作品は「PEACE IN THE PARK」、「追憶の雨の中」(デビューシングル)、「かなしみは・・・」です。

君が笑うとき君の胸が痛まないように

君が笑うとき君の胸が痛まないように

1990年9月25日発売。
「どんなときも。」のような大ヒットシングルは収録されておらず、セールスもパッとしなかったが(オリコン最高48位)、クオリティの高い作品が盛りだくさんでびっくりしました(ただし本人曰く、自分の意見があまり反映されなかったため本作品の出来には満足していないとのことです)。それと歌声が今と比べるとほんの少々シャープですね。

「Believer」(2016年発売の最新アルバム)

Believer(通常盤)

Believer(通常盤)

と比べるとほとんどが恋愛歌であり、曲のバリエーションの多彩さという点では比べものになりませんが(1つとして同じ分類の作品が無し!)、まさに「栴檀は双葉より芳し」を地で行くような秀作です。

それにしても「NG」がなぜデビューシングルとして選ばれたんだろうか? セカンドシングルの「北風/ANSWER」か、サビの英語詞のリズムが印象的な「80km/hの気持ち」あたりの方がふさわしいと思いますけどね〜。

あと福山雅治さんの同名曲とは全く関係ないが「桜坂」という曲があるのにもびっくりしました。あちらは失恋ソングですが、こちらは地方から都会に出ていった友達を懐かしむ歌(「僕らの街の言葉は正直きれいじゃないけど」という歌詞からするとなまりの強い地域だろうか?)です。

The Gospellers

The Gospellers

1995年10月21日発売。
ゴスペラーズの創設メンバーである村上氏と黒沢氏が傾倒するブラックミュージックの影響を受けた曲が多めです。あとほとんどの作品のメインボーカルを村上氏と黒沢氏が務めています(安岡氏が黒沢氏とのツインボーカルで「Higher」を歌っているのみ)。

だいぶ前にこの作品は聴いており、以前のこの時点での各メンバーの能力は

村上氏、黒沢氏=インディーズとはいえ作品(「Down To Street」)を発表しているプロフェッショナル。

安岡氏、酒井氏、北山氏=ゴスペラーズ解散の危機に急きょ集められたアマチュア

といったイメージを持っていましたが、

このネタを書くにあたり改めてこの作品を聴き、情報を調べてみると安岡氏、酒井氏、北山氏が歌うだけでない、ゴスペラーズの多様性(「U'll Be Mine」(セカンドシングル)で作詞を任されている安岡氏、「Higher」(サードシングル)と「深呼吸」で作曲を任されている酒井氏と北山氏)に最初期から大きく貢献していることが分かりました。

「Prpmise」から「永遠に」が出るまでの6年間、(タイアップは結構あったが)ビッグヒットがなかったのにもかかわらず作品を発表し続けられたのは各人の才能があったせいだと思いますが、すでにこの作品でその芽吹きを見ることができます。

安全地帯? Remember to Remember

安全地帯? Remember to Remember

1983年1月25日発売。
AOR、アダルトコンテンポラリーといったジャンルに分類されるでしょうか。

プロとしてデビューする前からバンドとして長い研鑽を積んでいるせいか、ファーストアルバムとしては演奏及び歌唱が非常に高い完成度を誇っています。今聴いてもとても洗練されており、古臭さを全く感じさせません。

ただしどこか邦楽というより洋楽の雰囲気を強く帯びており、あまり発売当時は受けなかったのはなんとなく理解できます。それとタイトルがほぼ英語です。

背徳的な「ラスベガス・タイフーン」(サードシングル)、疾走感を感じさせる「オン・マイ・ウェイ」(セカンドシングル)、歌詞がおかしな「ビック・ジョーク」(カタカナとアルファベットのみで書かれている)、クラシックギターの音色が印象的な「エンドレス」と名曲ぞろいです。

しかし、このあとに発表されるセカンドアルバムの「安全地帯2」が信じられないほど出来が良いので(各曲のインパクトの強烈さ、玉置さんの歌唱を含めたバリエーションの豊富さ)、それと比較するとどうしても聴き劣りしてしまうことは否めません。

安全地帯?

安全地帯?

なお、このアルバムには収録されていませんがデビューシングルである「萌黄色のスナップ」も聴いてみました。ドラムとキーボードが印象的な作品です。歌詞もサウンドもどっしりしたというか、少なくとも洒脱で都会的な雰囲気はまとっていません。

萌黄色のスナップ

萌黄色のスナップ