今回は3rdアルバム「Silhouette 〜シルエット〜」です。

シルエット

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1 Summer Beach 〜オレンジの香り〜 作詞:三浦徳子 作曲:小田裕一郎 編曲:信田かずお
ビーチボーイズ風ミュージック。歌いにくそうなリズム&メロディを聖子さんは伸びやか&軽やかに「SQUALL」の時より抑制を効かせて歌い上げます。しかし「オレンジ」は出てこないのになぜに副題に「オレンジの香り」?

2 白い貝のブローチ 作詞:松本隆 作曲:財津和夫 編曲:戸塚修
初めて作詞に松本隆さんが参加。まるで主人公の少女が目の前にいるような、鮮やかに浮かび上がる切ない詞です(夏の終わりに訪れる突然の恋の終わり、悲しい別れ、彼からもらった白い貝のブローチを海に捨てて涙する少女・・・)。

3 Sailing 作詞・作曲:財津和夫 編曲:大村雅朗
おしゃれなキーボードのイントロでスタート。この頃から聖子さんは低音が安定し、声がだんだんハスキーに変わっていくが「さよなら、私の悲しみ〜♪」の伸びはさすが。最後の「まるでそこからInvitaion あなたのやさしい心の中へ私をご招待」はまるで2人の心が溶け合っていくような心地よさです。また促すような「窓辺にすわりましょう」の歌い方。こういう小さな部分で一音もおろそかにしない細やかさが素晴らしい!そういう意味でもピアノと歌は一緒だ(こういう姿勢は見習いたい)。

4 ナイーブ 傷つきやすい午後 作詞:三浦徳子 作曲:小田裕一郎 編曲:大村雅朗
太陽が照りつける真夏なのにひどく寂しい雰囲気漂うナンバー。実ることのない、自分が彼の心の中の女性に勝てないことを分かっているかのような、諦念に充ち満ちた心情を(声はかすれ気味だが)的確に歌い上げる聖子さんの表現力が見事です。

5 チェリーブラッサム 作詞:三浦徳子 作曲:財津和夫 編曲:大村雅朗
チェリーブラッサム」というタイトル(本編には登場しない)、財津和夫さんの作曲=「暖かい春に愛の芽生え」的な、柔らかなタッチの切り口で来るのかと思いきや、ドラムでスタートし、ストリングスのスピード感&全編にギターが響き渡るハードなロックナンバー。しかしこの曲、最初は聖子さんが大嫌いだったのは有名な話です。そのせいかは分かりませんが、この録音では歌唱がいまいちというか、天才的な譜読み&表現力を誇る聖子さんにしては内容をうまく咀嚼出来ていない気がします(しかし録音後は何かが吹っ切れたのか、ライブでは超絶パフォーマンスで魅せてくれます)。

6 あ・な・たの手紙 作詞・作曲:財津和夫/編曲:信田かずお
遠くにいる彼の人となりを手紙の書きぶり(ようやく届いた手紙=それほど筆まめではない、便せんにめんどくさそうに文字が並び「好き」と言う言葉が書かれない=ちょっとがさつで素直な感情表現が苦手そうな人)で表している詞に感心。ダイナミクスの効いた聖子さんの歌唱(前半の情景描写の押さえた歌唱、後半の心を揺さぶられる絶唱)も見事です。

7 Je t'aime 作詞:三浦徳子 作曲:小田裕一郎 編曲:大村雅朗
「あ・な・たの手紙」の世界に浸っていると、同じ人が歌っているのかと疑いたくなるような、本アルバムでは少数派の元気いっぱいはじけまくりのナンバー登場(本当に目が覚めます)。詞も曲も、恋の喜びを妖精との軽やかなダンス(アン・ドゥ・トロワやジュテーム(フランス語)が出てくるのでバレエか?)に見立てたような世界観。

8 夏の扉 作詞:三浦徳子 作曲:財津和夫 編曲:大村雅朗
明るく開放感溢れる作品。切れ味の良い聖子さんの歌唱には圧倒されるばかり。うなりを上げるギターを筆頭とする、鮮やかなバックの演奏も聴きどころ。前半では「髪を切った私」に「違う人みたい」と言った照れ気味の彼氏が、後半ではお返しとばかりに道の向こう側から「好きだよ!」と大胆に叫んでくる対比も楽しいです。「フレッシュ!フレッシュ!フレッシュ!」のフレーズは言うまでもなく印象的だが、「裸の二人」というフレーズもなにげに気になります。

9 花びら 作詞:三浦徳子 作曲:小田裕一郎 編曲:大村雅朗
タタタタタタタタ・・・というキーボードのイントロ。曲や聖子さんの歌唱は可愛らしいですけど、乙女が女性へと目覚めていくような言葉(彼のキスが忘れられない、強く抱かれる夢を見る、ふしだらな女と言われてもかまわない)がちりばめられていて、刺激的でなんだかドキドキします。

10 愛の神話 作詞:三浦徳子 作曲:小田裕一郎 編曲:信田かずお
最初は「愛はecho」という歌詞が印象に残る程度の地味な作品だと思いましたが、今までにないタイプの作品というか、甘さのない真摯な愛で前向きに進んでいこうとする2人の姿が見えるような、静かでありながらも強さを感じさせる作品です。