そういう訳で、これから聖子さんの作品についてつらつら書いていきます。

SQUALL

SQUALL

全作詞:三浦徳子 全作曲:小田裕一郎

1 〜南太平洋〜サンバの香り 編曲:信田かずお
サンバのメロディに乗せて伸びとハリのある桁外れの歌声が響き渡ります(というより抑えが効かなくて跳ね回っている)。この1曲目を聴くだけで聖子さんが並はずれたポテンシャルを持っていることがわかる作品です。

2 ブルーエンジェル 編曲:信田かずお
ドゥーワップ調のコーラスでスタートするアメリカンポップス風作品。詞の内容(友達の彼氏を好きになってしまい、いけないことだとわかっているがその気持ちを止められず戸惑っている)と明るい曲調が一致していない気がします。

3 SQUALL 編曲:大村雅朗
スピード感溢れる全く古さを感じさせないタイトルナンバー。仮に当代随一のアイドルがこの夏の新曲として売り出したとしても違和感を感じさせないほどのクオリティの高さ。突然訪れるスコールと恋の激しさをリンクさせた詞も素晴らしい作品です。

4 トロピカル・ヒーロー 編曲:松井忠重
ミディアムテンポ、ちょっと大人な雰囲気のナンバー。フルートがアクセントになっている。聖子さんは低音(地声?)で歌唱に挑戦。「トロピカルヒーロー、sexy」はクセになる。またこの曲に限らないが、聖子さんの曲には季節感が織り込まれていることがとても多い。やっぱりプロデューサー(若松さん)から作詞家への意向なんだろうか。

5 裸足の季節 編曲:信田かずお
いろいろな経緯であんまり録音に時間をかけていられなかったせいか作りは粗いが、聖子さんの技巧を凝らさない素直で伸びやかな、ダイヤの原石のような歌唱が聴ける貴重な作品。やっぱり「エクボの秘密あげたいわ〜♪」の部分の伸びやかさと芯の強さは何度聴いても出色です。

6 ロックンロール・デイドリーム 編曲:大村雅朗
佐藤準の軽快なキーボードで幕開け。ささやくような歌声、低くハリのある歌声、突き抜けるような高い歌声、さながら聖子さんの歌声の見本市のような作品です。間奏のハードなギターも聴きどころ。

7 クールギャング 編曲:松井忠重
けっこうアダルトな雰囲気を漂わせたロックナンバー。6曲目と作調が似ています。あんまりアイドルらしくない作品。

8 青い珊瑚礁 編曲:大村雅朗
冒頭から繰り出される伸びやかなサビと中音域のささやくような歌声の2段構え。聖子さんの当時持っていたポテンシャルのすべてがつぎ込まれた、製作陣&聖子さんが満を持して繰り出した(と思われる)1曲です。セカンドシングルだがこちらが真のデビュー曲といっていいかも。歌い方も「裸足の季節」に比べてずっと洗練されています。

9 九月の夕暮れ 編曲:信田かずお
「夏」や「クール」をテーマに据えた当コンセプトアルバムの中で、なぜか夏を通り越して晩秋(「coming soon winter」という歌詞あり)を感じさせる歌謡曲調の異色作。製作陣が聖子さんの可能性を探ったかのような「お試し的」作品です。

10 潮騒 編曲:大村雅朗
アルバムの終わりを感じさせるアダルトコンテンポラリー調の作品。「こんな夜は抱きしめて」のささやくような歌い方が素晴らしい。